「ひらこう!学校図書館 第23回集会」報告
2019年7月6日(土)日本図書館協会2F研修室において開催された第23回
集会は約60名の参加者を得て、指定管理者制度を含む今日的課題を学び、
たゆまぬ市民活動の実践を聞き、明日への希望が感じられる学習会となっ
た。
「生涯学習社会における図書館の運営について~公立図書館・学校図書館にお
ける今日的な課題~」と題して、元調布市立図書館長である座間直壯氏が以
下のように課題を整理された。
「主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動である社会教育
と生涯学習は区別して考えなければならない。『平成29年度文部科学白書
生涯学習社会の実現』では、生涯学習を教育行政の範囲から産業、労働、福
祉などを含む政策へと拡大していく方向が示された。多様性の時代における
自己判断、自己責任が求められる生涯学習社会において、図書館の役割は大
きい。図書館法は1950年に定められたのに、2012年にやっと「図書館の設置
及び運営上の望ましい基準」が告示された。日図協は2009年に『公立図書館
の任務と目標解説 改定版増補』を策定し、図書館計画、職員、経費、施設
の適切な措置を継続的・安定的になされることを行政の義務として示した。
市民も図書館ならではの主張を計画に反映させなければならない。
指定管理者制度は(断片的な管理運営が図書館にはそぐわず、職員の身分
保障が危うい。民間企業のメリットは少ない。特定団体を指定できる制度で
あるために疑念が生じやすく導入の理由や目的が明確に示されない場合があ
る。計画立案、サービスの評価実績が蓄積されていかないので、利用者にと
っての問題は大きく、地域との連携もうまくいかない)などの理由により図
書館への導入はなじまない。図書館の管掌を教育委員会から首長部局に移管
する問題により、社会教育と生涯学習がまぎらわしくなってきている。そん
な中、文字活字文化議員連盟「公共図書館プロジェクト」(答申)は大きな
一石を投じたといえる」
次に「学校図書館に司書を願い続けて―25年目の宿題」と題して、学校図書
館を考える会・丸亀代表の溝渕由美子氏が報告された。
「香川県丸亀市は人口約11万。〝ぱっちわーく創刊1周年記念全国縦断 学校
図書館を語るつどい″の開催をきっかけに、考える会が発足。2014年度より
小中学校23校に、21名の学校司書が配置されている。専任20名と3校兼務1名
(島嶼部)で、年間授業日数+数日で、1日7.5時間の週5日勤務。つどい開催
後も〝ぱっちわーく″の支援を受け、岡山市の学校図書館見学を続け、多く
の講師から学び得た。しだいに願いは「子どもと本との出会いを作りたい」
から「教育を豊かに作る」に変わり、専任配置にこだわって活動を続けてき
た。
学びを伝える活動で大切にしてきたのが、PTAや市PTA連絡協議会と
の関係で、学習会開催や要望提出、署名活動などを協働で行ってきた。常
にいろいろな立場の人との対話に心がけ、情報を得たら行動するように努め
た。間に合う段階で動かなければ流れは変えられないという思いは強い。
まずは足元の丸亀市を充実させることに努めてきたが、今後は香川県内の
充実を視野に入れ、あきらめることなく伝え続ける活動を行っていくつもり
だ」
情報交流の時間では、東京都日野市・世田谷区・杉並区、神奈川県横浜市
・川崎市、岡山県岡山市などから、各地の現状と会計年度任用職員制度の
計画状況などが報告された。
平成30年度文部科学白書
文部科学省の施策全体が記述されている『平成30年度 文部科学白書』が刊
行された。特集には「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」と「激甚化する災害への対応強化」があげられている。
学校図書館に関する項目は、第2部第3章「生涯学習社会の実現」に「学校図
書館資料の整備・充実」「学校図書館の活用を推進するための人的配置の推
進」などが取り上げられている。
「ひらこう!学校図書館 第23回集会」で講師の座間氏が、平成29年度白
書には学校図書館に関する項目は「生涯学習社会の実現―読書活動の推進」
に取り上げられていて、「初等中等教育の充実」の項目には学校図書館の
記述は一切ないことを指摘されていたが、今回も同様な形になっている。