学校図書館を考える全国連絡会2017アピール
学校図書館は、一人ひとりの子どもの豊かな育ちと学びを支援する教育機関です。2015年4月の改正学校図書館法施行により「学校司書」が法律に位置づけられ、学校司書を置くこと及び学校司書の資質向上のための研修の実施が、国と地方公共団体の努力義務となりました。さらに学校司書としての資格と養成の在り方等についての検討と必要な措置を講ずることが附則に明記されました。
これを踏まえ、文部科学省では「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」において審議を重ね、「学校図書館ガイドライン」と「学校司書モデルカリキュラム」が盛り込まれた報告を昨年10月に提示しました。これにより学校図書館の基本的な考え方や国や文科省、教育委員会に求められる取組み、一定の資質を備えた学校司書の継続的な配置の必要性を明らかにしています。また、今年度から平成33年度までの「第5次学校図書館図書整備等5か年計画」では、地方財政措置として総額約2350億円が計上されました。学校司書の配置については、単年度措置であったものが5か年計画に新たに位置づけられ、約1100億円の措置により小・中学校のおおむね1.5校に1名程度の学校司書の配置が可能となりました。
しかし、文科省による「学校図書館の現状に関する調査」(H28年4月1日現在)では、全国の学校司書の配置は小学校59.2%、中学校58.2%、高校66.6%に とどまり、いまだ不充分な現状が明らかになっています。加えて、公立小中学校司書のほとんどが非正規という不安定な身分は改善されず、勤務日数・時間の制限、複数校兼務、劣悪な待遇など、さまざまに困難な実態に変化は見られません。また、自治体の教育施策と切り離された外部委託での学校図書館職員配置という深刻な事態は相変わらず存在しています。
私たちが変わらず求めているのは、子どもたちの主体的な学びと豊かで自由な読書が、全国のあらゆる地域で実現することです。そのためには、学校司書が専任・専門・正規の職員として配置され、教職員の一員として教育活動に参画できる体制が不可欠です。ここに、国および地方公共団体が、学校図書館に関する施策を一層押し進めることを求めて、以下のように要望いたします。
・ 国および地方公共団体は「専任・専門・正規」の学校司書配置のためにさらな
る予算措置も含め、あらゆる有効な施策を講ずること。
・ 国および地方公共団体は学校司書の資質向上のための研修を計画的に実施し、
そのために必要な措置を履行すること。
・ 地方公共団体は、教育活動に寄与する学校司書の仕事を、外部委託や図書館ボ
ランティアにけっして代行させないこと。また国は、そのことを明確に打ち出
すこと。
2017年7月8日
学校図書館を考える全国連絡会 第21回集会参加者一同
第5次の「学校図書館図書整備等5か年計画」
地方財政措置が確定 学校図書館図書標準が十分な水準に達しておらず、新聞を活用した学習を行う環境が十分に整備されていない現状があり、学校司書の配置の必要性が強く認識されていることから、H29年~H33年の5か年で学校図書館図書標準の達成を目指すとともに、計画的な図書の更新と学校図書館への新聞配備、学校司書の配置拡充を図ることとなった。
今回の措置では、小・中学校の学校図書館図書整備費・学校図書館への新聞 配備費・学校司書の配置費をそれぞれ増額させ、さらに学校司書の配置が5 か年計画に位置づけられた。 また、新たに高等学校図書館への新聞配備費が 措置された。内容は、以下のとおり。
【第5次学校図書館図書整備等5か年計画 計:約2,350億円(第4次約1,825億円)】
●図書整備費:約1,100億円(第4次 約1,000億円)
<増加冊数分:約325億円 更新冊数分:約775億円>
●新聞配備費:約150億円(第4次 約75億円) 小・中学校等:約100億円
<小学校等:1紙(約50億円) 中学校等:2紙(約50億円)>
高等学校等 :約50億円 <高等学校等:4紙>
●学校司書配置費:約1,100億円(第4次 約750億円)
<小・中学校等の概ね1.5校に1名程度の配置>